脂質=”悪”ではない!日本人の食事摂取基準から学ぶ正しい脂質の理解

ダイエット・食事
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脂質と聞くと揚げ物やスイーツなどからイメージするような
“高カロリー”、“生活習慣病に関わる”など負の印象が強い人が多いかもしれません。しかし、脂質は身体にとって重要な栄養素の一つです。脂質の重要性について「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を基に紹介していきます。

脂質は身体にとって重要な栄養素

脂質は三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)の1つで重要な栄養素の1つです。三大栄養素の中で脂質は1g当たりのカロリーがタンパク質や炭水化物の2倍以上あることは大きな特徴と言えるでしょう。
また、エネルギー源としての役割以外にも細胞膜の構成成分であったり、脂溶性ビタミン、カロテノイドの吸収を助けたり、ビタミンD、性ホルモン、副腎皮ホルモンの元になったりとその役割は多様です。

脂質の種類

脂質には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が存在します。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は体内で合成が可能であり必須栄養素ではありません。また、高LDLコレステロール血症の主なリスク要因の1つであったりと摂取過多に注意が必要な栄養素として挙げられます。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸にはその分子の構成によって一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分けられます。

一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸として代表的なのはオレイン酸、トランス脂肪酸などです。
オレイン酸については飽和脂肪酸から体内で合成することが可能です。
トランス脂肪酸は工業的に液状油を固形油に加工する際に発生し、冠動脈疾患の発症率に関係するなど摂取過多に注意が必要な脂質の1つです。

多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸には必須栄養素のリノール酸、アラキドン酸などn-6系脂肪酸や、EPA、DHA、αリノレン酸などn-3系脂肪酸があります。必須栄養素のn-6,n-3系脂肪酸は、体内で生成できない栄養であり、極端に摂取が足りないと皮膚炎などの欠乏症が発生します。

摂取の目安や目標量は?


様々な種類のある脂質ですが、ではどのくらい摂ればよいのか?という疑問に対して「日本人の食事摂取基準」では脂質の総量、飽和脂肪酸の目標量と、必須栄養素のn-6,n-3系脂肪酸に対しての目安量を設定しています。摂取目標量は総摂取エネルギーの20~30%(※1歳未満除く)を設定されておりこれはエネルギー量(kcalなど)であり質量(gなど)ではないことも注意が必要です。
飽和脂肪酸に関しては目標量を~%以下で示していますので割合が少ない方が良いでしょう。
n-6,n-3系脂肪酸については年齢、性別でそれぞれ細かく摂取目安量が設定されています。

生活習慣病を予防するために

脂質の総摂取と生活習慣病の関係性はみられない?
実は脂質の総摂取と生活習慣病の関係性はみられないというのが現状の見解です。
しかし、脂質の種類によってはその摂取量によって冠動脈疾患の発症率を上げるなど注意が必要な脂質も存在します。

飽和脂肪酸は血中コレステロール濃度を上昇させる

飽和脂肪酸は高LDLコレステロール血症の主なリスク要因であり、飽和脂肪酸の摂取量は血中コレステロール濃度に比例することがわかっています。そのため血中コレステロール濃度を減少させるために飽和脂肪酸の摂取量を制限することは有効と言えるでしょう。

トランス脂肪酸は摂取量に注意

トランス脂肪酸は工業由来のものがほとんどで液状油を固形油に加工する際に発生します。飽和脂肪酸よりもLDLコレステロール/HDLコレステロール比を大きく上昇させることや、冠動脈疾患の発症率を上昇させることがわかっています。ただ、日本人の平均摂取量は0.3%エネルギー程度であるため飽和脂肪酸の7%エネルギー程度に比べると十分に少なく、その分影響度も少ないと考えられます。そのため、トランス脂肪酸を含む食品を理解し摂取量が過度にならないように注意する必要があります。

飽和脂肪酸を多価脂肪酸に置き換えるとメリットがたくさん

上記でも飽和脂肪酸は高LDLコレステロール血症のリスク要因であったり摂取量に注意が必要なことを述べましたが飽和脂肪酸を多価脂肪酸に置き換えることで冠動脈疾患の減少や、心筋梗塞発症率の減少、EPA、DHAによって循環器疾患予防に有効なことがわかっています。

健康の保持・増進にn-6,n-3系脂肪酸が重要

n-6,n-3系脂肪酸の摂取量が足りないと皮膚炎の原因に

n-6,n-3系脂肪酸の摂取量が少ないと鱗状皮膚炎、出血性皮膚炎、結節性皮膚炎、成長障害など様々な悪影響が発生します。しかし、これは非常に摂取量が少ない場合のため必要以上に恐れる必要はなさそうです。

妊婦にも重要なアラキドン酸、DHA

n-3系脂肪酸をのDHAは神経シナプスや網膜の光受容体に多く胎児の器官生成に必要な栄養素です。また、n-6系脂肪酸のアラキドン酸も神経組織構成脂質であり、どちらも妊婦には摂取することがおすすめな栄養素と言えます。

際立つn-3系脂肪酸の効果

n-6,n-3系脂肪酸はどちらも重要な必須栄養素ですが、n-3系脂肪酸の効果には際立つ部分があると言えそうです。EPA、DHAは循環器疾患予防に有効であり、そのほかにも認知機能低下予防、認知症予防に有効なことがわかっています。また、n-3系脂肪酸は中性脂肪を下げる働きがあったり、善玉コレステロールとして知られるHDLコレステロールを上昇させる効果などがあり、積極的に摂取をすることがおすすめです。

意外と知らないコレステロールの話

コレステロールと聞くとCMや健康診断でなにかと悪者をして扱われるイメージがありますが身体にとって重要な役割を担っています。

コレステロールの役割

コレステロールは細胞膜の構成成分であったり、肝臓では胆汁酸に変換されたり、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体であったりとその役割は多岐に渡ります

コレステロールの食事由来のものは1/3~1/7

実はコレステロールは体内でも生成されるため経口摂取でのコレステロールの割合は1/3~1/7です。経口摂取が増えると体内での生成が減り、経口摂取が減ると体内での生成が増え、ある程度一定に保つように身体が作用します。そのため一概に経口摂取量が血中総コレステロールに反映されるわけではないのです。

それでも摂取量が多い人は血中コレステロールが上昇する

コレステロールは体内で生成され一定に保とうとする働きがあるため経口摂取がすべてではないと前述しましたが、やはり摂取量が多いと血中コレステロールも増加してしまいます。コレステロールの過剰摂取は循環器疾患の危険因子になるため摂りすぎには注意が必要です。しかし、残念なことに現時点では上限量を設定することが出来るだけの十分な根拠がなく定められていません。

最後に

脂質は身体にとって重要な栄養素である一方、過度な摂取は冠動脈疾患や循環器疾患の要因になることもあります。日頃から食品に含まれる脂質の量や種類に気にかけることが重要です。

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