■この記事はこんな人におすすめ
・ミネラルの必要性について気になる人
・個別にミネラルのサプリメントを摂取しようか悩んでいる人
・ミネラルの(欠乏・過剰摂取)影響で体調不良を来しているかもと思っている人
の手助け、解決の糸口になればと思っています。
炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンに比べるとないがしろにされやすい”ミネラル”ですがその機能には、栄養を正常に吸収させたり、循環させたり、人の成長、発達に深くかかわっているものも少なくありません。
そんな人にとって重要なミネラルを”日本人の食事摂取基準(2020版)”を基に紹介していきます。
ミネラルの種類
5大栄養素の一つで、摂取することでそのもの自体はエネルギーにはなりません。しかし、栄養を吸収したり、身体に届けるために重要な働きをしてくれます。
そんなミネラルは大きな分類として多量性ミネラルと微量ミネラルの2つに分かれます。
比較的体内に多く存在するミネラルを多量ミネラル、反対に比較的少量なミネラルを微量ミネラルと呼びます。
その中に必須ミネラルが13種存在します。一覧は下記の表です。
それではそれぞれのミネラルについて1つずつ紹介していきます。
多量ミネラル
ナトリウム
ナトリウムは、胆汁、膵液、腸液などの材料になります。
そしてもう1つの重要な役割は細胞外液の量、浸透圧、酸・塩基平衡を維持する機能です。
簡単に言うと血管から運ばれる栄養素や酸素を細胞に効率よく送るために周辺を整備する役割を担ってくれています。
そんな重要なナトリウムですが日本人の摂取レベルは高く不足や欠乏はほとんどありません。
ナトリウムの食事摂取の大半は”食塩”です。「塩の取りすぎは気を付けましょう」は、ここからきています。
食塩の過剰摂取は高血圧に影響し、そこから慢性腎臓病(CKD)の発症、重症化に関与していると考えられています。
また、様々な研究の報告で高食塩摂取は胃がんのリスクを高めるという報告がされていいます。
食塩相当で成人男性なら7.5g、女性なら6..5g未満を1日の摂取目標にすると良いとされています。
カリウム
カリウムは野菜や果物に多く含まれます。
細胞内液の主要な陽イオンとして働き、体液の浸透圧、酸・塩基平行の維持に関わっています。
健康な人において、下痢、多量の発汗、利尿剤の服用の場合以外は、カリウム欠乏を起こすことはほとんどないようです。
カリウムといえば”むくみ防止”として知られていますが、これはナトリウムの尿中排泄を促す作用があるためです。
むくみの原因はナトリウムと水分のバランスが崩れるためです。これを一挙に解決してくれる分けです。
その他、近年ではカリウムの摂取量増加によって血圧低下、脳卒中予防に繋がるという研究報告もあります。高食塩摂取になりがちな現代人はカリウムを含む野菜や果物の摂取も心がけると良さそうです。
カルシウム
骨や歯の材料として重要なカルシウム。
カルシウムは血中にも存在しその濃度が一定に保たれるようになっています。
もし、カルシウムが外から摂取されなかった場合、血液中のカルシウムを一定に保つためにはどうしたらよいか?
答えは骨を溶かして体の内側にあるカルシウムを血液中に送ります。カルシウムの摂取の重要性が伺えます。
骨はこのようにカルシウムとして持ち出されたり、反対に血液からカルシウムを受け取って形成したりを常に繰り返しています。
カルシウムが欠乏すると骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化などを招きます。
反対に過剰摂取も身体に良くない作用があり、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などが生じます。
過剰摂取の目安は2500mgであり、一般的な食品からの摂取で超えることは稀です。
しかし、サプリメントを使用する場合は注意しておく必要がある値になるので、成分表示を確認するようにしましょう。
マグネシウム
マグネシウムもカルシウムと並んで骨や歯に重要な栄養素です。その他にも体内の酵素の働きやエネルギー産生に寄与しています。
マグネシウムが不足すると、吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、筋肉の痙攣、ふるえ、食欲不振などの症状が現れます。
そして、長期にわたる不足は骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させます。
推奨量は20代男性で340mg、女性で270mgです。
過剰摂取によってあらわれる初期症状は下痢があり、サプリメントなどを服用している場合に下痢の症状が見られた場合には服用を見直すと良いでしょう。
リン
成人で最大850gのリンが体内に存在し85%は骨、14%は軟組織や細胞膜、1%は細胞外液に存在します。
骨に存在し骨格の形成に重要な働きがあります。その他にもATP(生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用を司る物質)の形成、細胞膜リン脂質(細胞膜組織の1つ)の合成などに必須の成分になります。
リンは様々な食品の中に存在するため欠乏はごく稀のようです。
反対に加工食品などでは食品添加物としてのリンの使用も多いため過剰摂取に注意が必要です。
リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を抑制するため、骨減少の原因になる可能性がある。
食事摂取の上限量としては成人の男女ともに3000mg/日とされています。
微量ミネラル
鉄
ヘモグロビンや各種酵素を構成する成分です。有名な欠乏による症状で貧血が挙げられます。
推奨量としては20代男性で7.5mg、女性で10.5mg/日です。
反対にサプリメント類の使用による、過剰摂取は組織への鉄の蓄積が多くの慢性疾患の発症を促してしまいます。
鉄の長期過剰摂取による鉄沈着症(肝障害や腎不全などのリスク)の予防が重要です。
亜鉛
体内の骨、、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに分布しています。
タンパク質と結合することでさまざまな生理機能を発揮します。
亜鉛が欠乏すると皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害などの症状が現れます。
しかし、通常の食事では欠乏に至ることは少ないようです。
推奨量としては20代男性で11mg、女性で8mg/日です。
反対に過剰摂取は鉄、銅の吸収を阻害し、貧血や胃の不快感などを起こします。
摂取上限量としては20代男性で40mg、女性で35mg/日です。
銅
身体の中に銅があるのか!?と思う人もいるかもしれません。そしてそれが体の中で重要な働きをしているとは!?とも。
成人体内に約100mg存在し、筋肉や骨に65%、約10%は肝臓中、残りは酵素の活性中心に存在します。
エネルギー生成や鉄代謝、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などの働きに関わっています。
メンケス病という先天的に銅を吸収することが出来ず欠乏症となる病が存在します。
また、食事性の欠乏では、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、脊髄神経系の異常などの症状が現れます。
推奨量としては20代男性で0.9mg、女性で0.7mg/日です。
過剰摂取では銅が脳、肝臓、角膜などに蓄積し、肝機能障害、神経障害、精神障害、関節障害などに関わる可能性があります。
摂取上限量としては成人男女ともに7mgです。
マンガン
マンガンは人に必須の栄養素として認識されています。
マンガンの欠乏症として成長抑制とびまん性(広範囲で発生)の骨の脱石灰化の可能性がある。
しかし日本人はマンガンを豊富に含む穀類、豆類などの食品を摂取しているため欠乏は稀と言えます。
推奨量としては成人男性は4.0mg、女性は3.5mg/日です。
過剰摂取には慢性中毒の恐れがあります。
また、長期に血中マンガン濃度が高い状態が続くと脳への蓄積によりパーキンソン病様の症状が現れます。
サプリメントの不適切な利用のほか、厳密な菜食など特異な食事形態によっても過剰摂取が生じるリスクがあります。
摂取上限量としては成人男女ともに11mgです。
ヨウ素
ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成する栄養素です。
甲状腺ホルモンは生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させます。
ヨウ素の欠乏は甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌亢進、甲状腺の異常肥大、又は過形成により甲状腺の機能を低下させます。
また、妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下を招きます。
ヨウ素は食卓塩に添加されています。海藻類、特に昆布に高濃度などに含まれています。
推奨量としては成人男女ともに130μgです。
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害され、これが長期にわたると、供給量とは反対にヨウ素が不足し、軽度の場合には甲状腺機能低下、重度の場合には甲状腺腫が発生します。
日本人は昆布を習慣的にとっており”世界でも稀な高ヨウ素摂取の集団”です。
特殊な昆布摂取が行われた場合には過剰摂取となる恐れがあります。
摂取上限量としては成人男女ともに3000μgです。
セレン
セレンはタンパク質と合成し生理機能を発現します。
これは、抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝に重要な役割を果たします。
セレンが欠乏すると心筋障害を起こす克山病、カシン・ベックなどに関係します。
セレンは魚介類に多く含まれ、穀物、畜産物などは土壌のセレン濃度に依存します。
日本人は魚介類を摂取する習慣があり、セレン含有量の多い北米産の小麦製品、畜肉類を消費しているため通常の食事から欠乏は稀であると考えられる。
推奨量としては成人男性で30μg、女性で25µg/日です。
反対に、過剰摂取による慢性セレン中毒で最も高頻度の症状は、毛髪と爪の脆弱化・脱落が挙げられます。
サプリメントの不適切な利用によって過剰摂取を生じる可能性があるため用法・用量を守ることが求められます。
摂取上限量としては成人男性で約450μg、女性で350µg/日です。
クロム
クロムはインスリン作用を増強させ、糖代謝の改善効果が見込まれます。
欠乏についての動物実験による研究では、糖代謝異常は全く観察できず欠乏の好ましくない影響については詳細までは分かっていません。
しかし、糖代謝を改善することから必須栄養素と考えられています。
推奨量としては成人男女ともに10μg/日です。
しかし、クロムはインスリンの感受性を高めることはなく、過剰摂取するとインスリンの感受性を低下させることがある。
そのためサプリメントの不適切な利用は避ける必要がありそうです。
摂取上限量としては成人男女ともに500μg/日です。
モリブデン
モリブデンは数種の酵素の補酵素(酵素の機能を手助けする)として機能します。
モリブデンの欠乏によって神経過敏、昏睡、頻脈、頻呼吸などが発症する可能性があります。
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれ、通常の食事の場合、欠乏の発症は稀でしょう。
推奨量としては成人男性で約30μg、女性で25µg/日です。
過剰摂取の影響は判然とはわかっていないが高尿酸血症と痛風様症状の発症が報告されています。
摂取上限量としては成人男性で600μg、女性で500µg/日です。
最後に
いかがでしたでしょうか。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンにも負けず劣らず重要な働きをしているミネラルですが普段の食事から野菜、穀類、魚介類、肉類など多様な食材を摂取することで欠乏は回避できそうです。
反対にサプリメントなどの用量を守らないような過剰摂取による好ましくない影響にも注意が必要そうです。
日頃の食事を大切に、そして不足分のみをサプリメントなどで適量補給するというようにバランスを見ながら摂取で健康的な身体を目指しましょう。
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